鏡餅はなぜあの形をしているの?|丸い形と重ね方に込められた意味
お正月に欠かせないお飾りといえば「鏡餅」。
白くて丸いお餅が2段に重ねられ、上に橙(だいだい)がのっている姿は、まさに日本のお正月の象徴です。
でも、なぜ鏡餅はあのような形をしているのでしょうか?
この記事では、鏡餅の形や重ね方に込められた意味、神様との関係、そして現代まで受け継がれる理由を詳しく解説します。
鏡餅とは?
鏡餅は、年神様(としがみさま)をお迎えするために飾るお供え物です。
年神様はお正月に各家庭にやってきて、家族の健康や豊作、幸福を授けてくださると信じられています。
鏡餅はその神様への“お供え”であり、“依り代(よりしろ)”でもあります。
つまり、鏡餅には神様の魂が宿ると考えられているのです。
丸い形の意味:太陽と鏡を象徴している
鏡餅が丸い形をしているのは、「鏡」を模しているからです。
古代の日本では、鏡は神聖なものとして信仰の対象でした。
特に「三種の神器」のひとつである「八咫鏡(やたのかがみ)」は、天照大神(あまてらすおおみかみ)の御神体として知られています。
つまり、鏡餅の丸い形には「神の力」「太陽」「円満」「永遠」といった意味が込められています。
また、丸い形は「人の心の円満さ」や「家庭の和」を象徴しています。
角が立たず、まるく収まる——そんな平穏な1年を願って、丸い鏡餅が飾られるのです。
二段重ねの意味:月と太陽、陰と陽の調和
鏡餅が2段になっているのにも理由があります。
上と下、2つを重ねることで「過去と未来」「陰と陽」「月と太陽」を表しているのです。
これらが調和することで「一年が無事に巡り、豊かな日々が訪れる」という願いが込められています。
さらに、「一段目=去年」「二段目=今年」ともいわれます。
過ぎた年に感謝し、新しい年の幸せを祈る——そんな意味もあるのです。
橙(だいだい)をのせる意味:代々続く繁栄
鏡餅の上に飾る橙(だいだい)にも深い意味があります。
「橙(だいだい)」という名前は「代々」に通じることから、家が代々続くようにという願いが込められています。
また、橙は木になっても実が落ちにくく、数年にわたって枝に残る性質があります。
その姿から「家族が長く繁栄し、結びつきが続く」象徴とされているのです。
その他の飾りにも意味がある
鏡餅の周りには、紙や昆布、海老などさまざまな飾りが添えられます。
それぞれに意味があります。
| 飾り | 意味・由来 |
|---|---|
| 四方紅(しほうべに) | 敷き紙。四方を紅で囲い、災いを払う。 |
| 譲り葉(ゆずりは) | 新しい葉が育ってから古い葉が落ちることから、代々の継承を象徴。 |
| 昆布(こぶ) | 「喜ぶ」に通じる縁起物。 |
| 干し柿・海老 | 長寿や健康を願う飾り。 |
なぜ「鏡」という名前なのか?
鏡餅の「鏡」という言葉には、古代の銅鏡に由来があります。
昔の鏡は今のようなガラス製ではなく、青銅でできた丸い鏡でした。
その形が丸餅に似ていたため、「鏡餅」と呼ばれるようになったといわれています。
また、鏡は神の依り代とされていたため、神様に供える餅を「鏡餅」と呼ぶのはごく自然なことだったのです。
鏡餅を飾る時期と片づける時期
鏡餅は、一般的に12月28日に飾るのが良いとされています。
「八」は末広がりの縁起の良い数字だからです。
一方で、29日は「二重苦」、31日は「一夜飾り」とされ、避けられる傾向があります。
そして、お正月が明けた1月11日に「鏡開き」を行い、神様に感謝しながら餅を食べます。
包丁で切るのではなく、手や木槌で割るのが正式。
これは「切る」という言葉が「縁を切る」に通じるためです。
鏡餅の形をまとめて比較
| 部分 | 形・特徴 | 意味 |
|---|---|---|
| 丸い餅 | 円形 | 太陽・鏡・円満 |
| 二段重ね | 上下に二つの餅 | 陰陽の調和・過去と未来の結びつき |
| 橙 | 餅の上の果実 | 代々の繁栄・家族の絆 |
現代の鏡餅:形は変わっても意味は同じ
最近では、プラスチック容器に入った簡易型の鏡餅も多く見かけます。
中に切り餅が入っており、飾ったあとそのまま食べられるタイプが人気です。
形や素材は変わっても、「新しい年を清らかに迎え、神様に感謝する」という本質的な意味は変わりません。
まとめ:鏡餅の形には日本人の祈りが込められている
鏡餅の丸い形や二段重ねには、神様への感謝・家族の繁栄・円満な暮らしという願いが込められています。
太陽のように輝き、鏡のように心を映し出す形——それが「鏡餅」です。
今年のお正月は、ただ飾るだけでなく、その意味を思いながら鏡餅を見てみてはいかがでしょうか。


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