ラーメンになぜ「なると」が入っているの?渦巻き模様に隠れた意味とは
ラーメンの上にちょこんと乗っている、白地にピンクの渦巻き模様が印象的な“なると”。
チャーシューやメンマほど存在感はないものの、見た目に欠かせないトッピングのひとつです。
でも、そもそも「なると」って何?なぜラーメンに入っているのでしょうか?
なるとは魚のすり身から作られる「かまぼこ」の仲間
まず、「なると」とは“なると巻き”や“鳴門巻き”とも呼ばれる、魚のすり身を主原料とした加工食品です。
原料はスケトウダラやイトヨリなどの白身魚で、すりつぶしたものに塩や調味料を加え、型に入れて蒸し上げます。
断面が渦巻き模様になっているのが特徴で、これはピンク色のすり身を中心に巻き込んで作られたものです。
つまり「なると」は、“かまぼこ”の一種なのです。
かまぼこが板に乗っているのに対し、なるとは丸い棒状で、薄くスライスして使われます。
名前の由来は「鳴門の渦潮」から
なるとの代名詞ともいえる「渦巻き模様」。
この形は、徳島県と兵庫県の間にある「鳴門海峡」にできる渦潮をイメージして作られたといわれています。
そのため、見た目の特徴から“鳴門巻き”と呼ばれるようになりました。
つまり「なると」という名前は地名に由来しており、実際に徳島の名産というわけではありません。
とはいえ、その渦巻き模様が視覚的にもユニークで、日本全国に広まっていったのです。
ラーメンに入るようになった理由
では、どうしてラーメンのトッピングに使われるようになったのでしょうか?
① 見た目のアクセントになる
なるとの白とピンクのコントラストは、醤油ラーメンの茶色いスープによく映えます。
もともと日本では「料理は見た目も大切」とされ、なるとは彩りを加える役割を担っていました。
② 肉・魚・野菜のバランスをとる
昔のラーメンは、チャーシューなどの肉系トッピングが中心でした。
そこに魚のすり身でできたなるとを加えることで、味のバランスが取れるという考えもありました。
③ 昭和の屋台文化で広まった
戦後、日本各地にラーメンの屋台が広まりました。
このとき、保存性が高く安価で仕入れやすいなるとは、屋台主にとって扱いやすい食材だったのです。
スープに浮かべるだけで彩りが良くなり、華やかな印象を与えられたため、自然と定番化しました。
なるとの渦は“縁起物”でもある
なるとの渦巻きには、もうひとつ意味があります。
それは「渦=円(縁)を結ぶ」「終わりなく続く」という意味合いです。
このため、なるとは縁起の良い食べ物としても親しまれてきました。
特に昔の人々は、渦を「エネルギーの象徴」「流れを呼び込む力」として捉えていたため、なるとはラーメンに限らずお祝い料理にも使われることがありました。
なるとが使われるラーメンの地域性
実は、なるとがラーメンに入るかどうかは地域によって違います。
特に、昔ながらの醤油ラーメン文化が根強い関東・東北地方では、なると入りのラーメンが多い傾向にあります。
一方、味噌ラーメンやとんこつラーメンが主流の北海道・九州地方では、あまり見かけません。
この違いは、ラーメンのルーツやスープの色・味わいとのバランスに由来しています。
茶色いスープに白とピンクのなるとがよく映えるため、視覚的にも美しい組み合わせだったのです。
現代では“懐かしのトッピング”に
最近のラーメンは、具材の多様化が進み、なるとを見る機会は少なくなりました。
しかし、昭和世代にとってなるとは「ラーメンといえばこれ!」という懐かしさの象徴。
今でも老舗の中華そば店では、なるとを大切に使い続けています。
まとめ:なるとは見た目以上に深い意味をもつ食材
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 鳴門巻き(なると巻き) |
| 分類 | かまぼこの一種(魚のすり身) |
| 名前の由来 | 鳴門海峡の渦潮に由来 |
| ラーメンに使われる理由 | 見た目の彩り・味のバランス・屋台文化の影響 |
| 象徴する意味 | 縁起・円(縁)を結ぶ・懐かしさ |
なるとは単なる飾りではなく、歴史・文化・縁起が詰まった日本的な食材です。
ラーメンの中でひっそりと輝くその存在には、日本人の“美意識”と“粋”が込められているのかもしれません。

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