有給の時季変更権とは?わかりやすく解説
「有給休暇」は働く人なら誰でも知っている制度ですが、その中にある「時季変更権」という言葉は、実際に働いている人でもよくわからないという声が多いテーマです。本記事では、有給休暇の基本をふまえつつ、時季変更権について丁寧に解説します。
1. 有給休暇の基礎知識
有給休暇(年次有給休暇)は、一定の条件を満たした労働者に与えられる「休んでも給与が支払われる権利」です。労働基準法により定められており、労働者の健康や生活の安定のために設けられています。
有給休暇の基本的なポイントは以下の通りです。
- 一定の期間働いた労働者に付与される
- 休んでも給与が支払われる
- 取得する日時を労働者が希望できる(原則)
2. 時季変更権とは?
「時季変更権」とは、労働者が希望した有給休暇の取得日について、会社側が事業の正常な運営を妨げる場合に、取得日を変更できる権利です。労働者は有給休暇を自由に取得できますが、会社には業務の都合があります。そのバランスを取るための制度が時季変更権です。
たとえば、以下のようなケースが該当します:
- 繁忙期に多数の社員が同じ日に有給を取得希望した場合
- 緊急対応が必要な部署で人手が足りなくなる場合
このような場合、会社は有給休暇の取得日を別の日に変更するよう求めることができます。
3. 時季変更権が認められる条件
会社が時季変更権を行使するには、以下のポイントを満たしている必要があります。
- 事業の正常な運営を妨げることが明らかである
- 労働者の希望する日以外の日を指定する合理的な理由がある
- 事前に労働者へ通知し、調整を行う
これらの条件に該当しない場合、一方的に取得日を変更することはできません。
4. 時季変更権の例と注意点
具体的な例を挙げると、以下のようなケースが考えられます。
- コールセンターで繁忙期に全員が有給を希望 → 人員不足 → 変更指示
- 製造ラインの重要部品納品日と重なった → 生産に支障 → 変更指示
ただし、会社が単に「都合が悪い」という理由だけでは時季変更権は認められません。事業運営への具体的な支障が必要です。
また、会社には労働者と十分に話し合いながら調整する義務があり、労働者の希望を軽視した運用は不当とされる可能性があります。
5. 労働者側の対応ポイント
労働者として時季変更権が行使された際の対応ポイントは以下の通りです。
- 会社からの説明をしっかり聞き、理由を確認する
- 他の日程での取得が可能か相談する
- 必要であれば労働組合や労基署に相談する
柔軟な働き方が求められる現代だからこそ、会社と労働者の双方が納得できる調整が重要です。
6. まとめ
有給休暇の「時季変更権」は、労働者の権利と会社の運営上のバランスをとるための大切な制度です。労働者は有給を希望する権利を持っていますが、会社側も業務を続ける責任があります。そのために合理的な理由がある場合には、会社が取得日を変更することが認められています。
ただし、時季変更権は無制限に使えるものではありません。事業運営への具体的な支障がなければ行使できないこと、そして会社は労働者と十分に話し合う必要があることを理解しておきましょう。
本記事で紹介した内容を理解し、必要な時に適切に制度を活用できるようにしてください。

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