チャックとファスナーとジッパーの違い|呼び方の秘密を解説!
ズボンやバッグ、ジャンパーなどでおなじみの「チャック」「ファスナー」「ジッパー」。
実はこれら3つの言葉、どれも同じ構造の留め具(スライド式の開閉具)を指していますが、使われ方や由来が少しずつ異なります。
この記事では、日本人がよく混同する「チャック・ファスナー・ジッパー」の違いを、わかりやすく解説します。
ファスナーとは?
「ファスナー(fastener)」は、英語の “fasten(固定する)” に由来する言葉です。
つまり、「閉めるためのもの」「固定するもの」という意味があります。
日本語として定着したのは昭和初期で、当時の衣料品業界では「ファスナー」が正式名称として使われました。
現在でも、カタログや製品表示などでは「ファスナー」が正式名称とされています。
特徴:
- 正式名称として最も一般的に使われる
- 衣類・カバン・靴・寝具など幅広い製品で使用
- JIS規格でも「ファスナー」が正式用語
ジッパーとは?
「ジッパー(zipper)」は、アメリカ英語から入ってきた言葉です。
1917年にアメリカの靴メーカー「B.F.グッドリッチ社」が、自社のブーツに取り付けた開閉具を“Zipper Boot”と名付けたことが始まりです。
「zip(ジップ)」という擬音語が語源で、「ジッ!ジッ!」という音を立てて開閉する様子から名付けられました。
英語圏では一般的に「zipper」が日常的な呼称です。
特徴:
- 英語圏(特にアメリカ)では最も一般的
- 擬音が由来の親しみやすい言葉
- 「zip」や「zipper」は動詞としても使われる(例:zip up your jacket)
チャックとは?
「チャック」は、日本独自の呼び方です。
英語の「chuck(チャック)」には「つかむ」「固定する」という意味がありますが、実際には英語圏で「チャック=ファスナー」という使い方はされません。
この言葉が広まったのは、戦後の日本。
大阪の大手メーカー「吉田工業(現YKK)」が、自社製品を「チャック印ファスナー」として販売したことがきっかけです。
この製品名がヒットし、やがて「チャック=ファスナー」という呼び方が一般化したのです。
特徴:
- 日本でのみ使われる俗称
- YKK製品の「チャック印ファスナー」が由来
- 日常会話では最もよく使われる
チャック・ファスナー・ジッパーの比較表
項目 | チャック | ファスナー | ジッパー |
---|---|---|---|
意味 | 日本独自の俗称 | 正式名称・JIS規格用語 | 英語圏で一般的な呼称 |
語源 | YKKの「チャック印ファスナー」 | 英語“fasten(固定する)” | 擬音“zip”から |
使用地域 | 日本のみ | 日本(正式)・海外(専門用語) | 英語圏(特にアメリカ) |
使われる場面 | 日常会話 | 製品表示・業界用語 | 英語での会話・海外商品 |
例文 | 「ズボンのチャック開いてるよ」 | 「このカバンはファスナー式です」 | 「Please zip up your jacket.」 |
ニュアンス | カジュアルで親しみやすい | フォーマル・公式な言葉 | ネイティブが使う自然な英語 |
どれを使えばいいの?
基本的に、どの言葉を使っても意味は通じます。
ただし、使う場面によって適切な呼び方を選ぶとスマートです。
- 日常会話:「チャック」
(例:「チャック閉め忘れてるよ!」) - 商品説明や取扱説明書:「ファスナー」
(例:「ファスナーをしっかり閉めてください」) - 英語圏での会話:「ジッパー」
(例:「zipper broke(ジッパーが壊れた)」)
このように、「チャック=日本語」「ファスナー=正式名称」「ジッパー=英語」と覚えておけば完璧です。
なぜ日本では「チャック」が主流になったのか?
実は、昭和30年代ごろまでは「ファスナー」という言葉が主流でした。
しかし、YKKの宣伝効果とともに「チャック印ファスナー」が全国的に流行し、
消費者が「チャック=ファスナー」と誤解しながら広まっていったのです。
現在でも「ファスナー」という言葉を知っていても、
実際の会話では「チャック」と言う人が圧倒的に多いのはこの歴史的背景によるものです。
まとめ
チャック・ファスナー・ジッパーは、すべて同じ「スライド式開閉具」を指しますが、
言葉の由来と使い方には次のような違いがあります。
- チャック:日本独自の呼び方。日常的でカジュアル。
- ファスナー:正式名称。製品説明や業界用語に使用。
- ジッパー:英語由来。海外では一般的な表現。
つまり、「どれが正しい」というよりも、場面に応じて使い分けることが大切です。
あなたが今後、服やバッグを開け閉めするとき、
その「チャック(ファスナー・ジッパー)」には、意外な言葉の歴史が詰まっているのです。
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