なぜお盆に提灯を飾るの?由来や意味をわかりやすく解説
日本の夏の風物詩である「お盆」。先祖の霊を迎え、感謝を伝える大切な行事です。
そのお盆の時期になると、玄関や仏壇の前に提灯(ちょうちん)を飾る家庭を多く見かけます。
でも、なぜお盆に提灯を飾るのでしょうか?単なる飾りではなく、実は深い意味と歴史があるのです。
お盆とは?
お盆(盂蘭盆会・うらぼんえ)は、先祖の霊がこの世に帰ってくるとされる期間のこと。
一般的には、8月13日〜16日の4日間に行われます(地域によっては7月に行う「月遅れ盆」もあります)。
この期間は、先祖の霊を家に迎える「迎え火」から始まり、最後に霊を見送る「送り火」で締めくくられます。
そして、この迎え火・送り火の流れの中で重要な役割を果たすのが“提灯”なのです。
なぜお盆に提灯を飾るの?
① 提灯は「霊を導く灯り」
お盆の提灯には、先祖の霊が迷わず家に帰ってこられるように導く灯りという意味があります。
迎え火の代わりとして玄関先に灯すことで、「こちらがあなたの家ですよ」と知らせる役目を果たすのです。
また、帰るとき(送り火の際)には、霊が再び迷わずあの世へ帰れるように、提灯の明かりで見送ります。
つまり、提灯はお盆の「道しるべ」でもあり、「感謝の心を示す灯り」でもあるのです。
② 先祖への“感謝と供養”の象徴
提灯は単なる飾りではなく、先祖の魂を迎え、敬意と感謝を表す供養の灯りです。
明かりをともすことには、「闇を照らし、心を清める」という仏教的な意味も込められています。
③ 家族の絆をつなぐ象徴
お盆の期間は、家族が一堂に会して先祖を偲ぶ大切な時間です。
提灯の柔らかな灯りは、家族の心を照らし、世代を超えた“つながり”を感じさせてくれます。
提灯の種類と意味
お盆で使う提灯にはいくつか種類があり、飾る意味や使う場所が少しずつ異なります。
| 種類 | 特徴・用途 | 意味 |
|---|---|---|
| 迎え提灯 | 玄関や門口で使う提灯 | 先祖の霊が帰る道しるべ |
| 盆提灯 | 仏壇の両脇や前に飾る | 供養と感謝の象徴 |
| 白提灯 | 初めて迎える「新盆(初盆)」で使う | まだ穢れのない清らかな魂を迎える意味 |
| 家紋入り提灯 | 家ごとに使う提灯で、先祖を示す | 自分の家の霊を迎える印 |
特に「白提灯」は、新しく亡くなった人を初めて迎える“新盆”のときだけに使われます。
そのため、通常のお盆では絵柄入りや家紋入りの提灯に切り替えられます。
迎え火・送り火との関係
お盆の提灯と切っても切れない関係にあるのが「迎え火」と「送り火」です。
- 迎え火(8月13日):先祖の霊を家に迎えるための火。玄関先でオガラ(麻の茎)を燃やします。
- 送り火(8月16日):お盆が終わり、霊をあの世に送り出すための火。京都の「五山送り火」もこの風習の一つ。
提灯の明かりは、この迎え火・送り火の小型版といえる存在で、現代では火を焚く代わりに安全な電気提灯を使う家庭も増えています。
地域による違い
お盆の提灯文化は全国共通ではありますが、地方によって飾り方や風習が異なります。
- 関東地方:玄関に提灯を下げるスタイルが多い。
- 関西地方:仏壇の周りを盆提灯で囲むのが主流。
- 東北地方:野外に灯籠や灯りを並べる地域もある。
- 九州地方:精霊流し(しょうろうながし)で灯籠を川に流す風習がある。
どの地域でも共通しているのは、「明かりによって霊を導き、感謝の気持ちを表す」という点です。
提灯を飾る時期と飾り方のマナー
提灯は、一般的にお盆の初日(8月13日)に飾り、16日夜に片付けます。
新盆の場合は、12日から準備しておく家庭もあります。
飾るときは、火の取り扱いに注意しつつ、仏壇の前や玄関に左右対称に置くのが基本。
提灯を灯す時間帯は、夕方〜夜が最も一般的です。
まとめ:提灯は“感謝と導き”の灯り
お盆に提灯を飾るのは、先祖の霊を迎え、感謝の気持ちを伝えるため。
また、明かりを灯すことで「家族の絆」や「命のつながり」を感じる意味もあります。
現代ではLED提灯やインテリア風の盆提灯も登場していますが、そこに込められた祈りの心は変わりません。
柔らかな明かりの中で、先祖と家族の絆を静かに感じる時間――
それこそが、お盆の提灯の本当の意味なのです。


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