世界で最初に紙幣を作った国はどこ?中国・宋の時代に誕生した世界初の紙幣『交子(こうし)』の歴史や仕組み、日本への影響まで詳しく解説します。

雑学








世界で最初に紙幣を作った国は?中国・宋の「交子」とは

世界で最初に紙幣を作った国は?中国・宋の「交子」とは

私たちが日常的に使っている「お札(紙幣)」ですが、その始まりはいつ、どの国からだったのでしょうか?
答えは、約1000年前の中国・宋(そう)王朝です。
この記事では、世界初の紙幣「交子(こうし)」の誕生から、その仕組み、そして日本への影響までを詳しく解説します。


紙幣が生まれる前のお金のかたち

紙幣が登場する以前、人々は金属貨幣を使っていました。
古代中国では「刀銭」「布銭」と呼ばれる金属を加工した貨幣、
日本では「和同開珎(わどうかいちん)」などの銅銭が使われていました。

しかし、商取引が増えると問題が発生します。
それは、大量の銅銭を持ち運ぶのが重くて不便だったことです。
この不便を解消するために生まれたのが、紙幣の始まりでした。


世界初の紙幣「交子(こうし)」とは?

世界で最初の紙幣は、11世紀初頭の中国・北宋時代(960~1127年)に登場しました。
その名は「交子(こうし)」と呼ばれるもので、四川省(しせんしょう)の商人たちが考案しました。

当時、四川では鉄銭(てっせん)が主に使われていましたが、重くて大量に運ぶことができませんでした。
そこで商人たちは、銅銭を預けた証明として「紙の引換券」を発行し、取引をスムーズにしたのです。
これが後に政府公認の通貨として発展し、正式な紙幣となりました。


交子の仕組みと信用の仕組み

交子は、いわば「預かり証」のようなもので、発行者(商人)に銅銭と交換できるという信用が前提にありました。
つまり、「紙そのもの」には価値がなく、人々の「信頼」が価値を生み出していたのです。

やがて、宋政府はこの制度を国家管理下に置き、正式な通貨として交子を発行。
これにより、世界初の「政府が発行する紙幣」が誕生しました。

項目 内容
名称 交子(こうし)
発行時期 11世紀初頭(北宋時代)
発行場所 中国・四川省
発行者 最初は商人、のちに宋政府
交換対象 銅銭・鉄銭
特徴 世界初の政府公認紙幣

交子の普及と課題

交子は非常に便利だったため、中国各地で急速に広まりました。
しかし、その一方で偽札の横行発行しすぎによるインフレといった問題も発生しました。

これは現代の通貨にも通じる課題であり、経済をコントロールすることの難しさを当時の中国も経験したのです。

後の元(げん)王朝では「交鈔(こうしょう)」、明王朝では「大明通行宝鈔」など、紙幣制度が引き継がれました。
つまり、宋の交子はアジア全体の金融文化の原点だったといえます。


日本における紙幣のはじまり

日本で最初に紙幣が登場するのは、江戸時代初期です。
特に有名なのが、藩札(はんさつ)と呼ばれる地域限定の紙幣です。

これは各藩(地方政府)が独自に発行したもので、地域の商取引を円滑にするために使われました。
日本では、中国の紙幣制度を参考にしつつも、より地域経済に根ざした形で発展しました。

そして、明治時代になると「明治通宝」や「大日本帝国政府紙幣」など、国が発行する正式な紙幣が登場します。
このように、日本の紙幣制度も中国の交子から間接的に影響を受けているのです。


紙幣がもたらした世界的影響

交子の登場は、世界経済の歴史を大きく変える出来事でした。
紙で価値をやり取りするという発想は、やがて世界各地に広まり、ヨーロッパでも銀行が紙の「手形」や「約束手形」を使うようになります。

そして17世紀になると、スウェーデンの「ストックホルム銀行」がヨーロッパで初めての銀行券(紙幣)を発行しました。
つまり、世界最初の紙幣は中国で生まれ、その後ヨーロッパへ伝わり、現代の金融システムの礎となったのです。


世界初の紙幣「交子」と現代の紙幣の違い

項目 交子(北宋) 現代の紙幣
発行主体 商人→政府 国家(中央銀行)
価値の根拠 銅銭との交換保証 国家の信用(信用通貨)
素材 竹紙など 特殊紙・高強度ポリマー
偽造防止 ほぼ無し 透かし・ホログラムなど
使用範囲 地域限定(四川) 全国・国際通用

まとめ:紙幣の始まりは中国の知恵から

世界で最初に紙幣を作った国は中国・宋
その紙幣「交子」は、商人たちの知恵から生まれ、のちに政府公認の通貨として制度化されました。
重い銅銭の代わりに紙を使うという発想は、まさに経済の革命でした。

  • 交子は11世紀初頭に誕生
  • 世界初の政府発行紙幣
  • 信用を基盤とした通貨の原点
  • 後世の日本やヨーロッパに大きな影響を与えた

現代の電子マネーやデジタル通貨も、「信用で成り立つお金」という意味では、交子の延長線上にあると言えるかもしれません。
千年の時を超えて、紙幣の原点は今も私たちの生活に息づいているのです。


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