神社の狛犬が左右にいる理由とは?阿吽に秘められた意味
神社を訪れると、参道の途中や拝殿の前で左右に並ぶ「狛犬(こまいぬ)」を見かけます。
彼らはまるで神社を守る番人のような存在ですが、なぜ2体いるのでしょうか?
また、左右で少し顔や口の形が違うことに気づいた方も多いでしょう。
この記事では、狛犬が左右にいる理由やその意味、歴史的背景をわかりやすく解説します。
狛犬とは?神社の守護獣
「狛犬」とは、神社の入口や拝殿前に置かれている一対の像のこと。
その役割は、神社を悪霊や災いから守ることです。
もともとはライオンをモデルにした守護獣で、中国や朝鮮半島を経て日本に伝わりました。
「狛(こま)」とは古代朝鮮の地名「高麗(こま)」に由来し、
「高麗から伝わった犬(守護獣)」という意味で「狛犬」と呼ばれるようになったのです。
左右に1体ずつ置かれる理由
狛犬が2体でセットになっているのは、単なるデザインのためではありません。
実は、左右でそれぞれ異なる役割と意味を持っています。
一般的に、
- 右側の狛犬 → 口を開けている「阿形(あぎょう)」
- 左側の狛犬 → 口を閉じている「吽形(うんぎょう)」
この2体で、「阿吽(あうん)」を表しています。
阿吽(あうん)の呼吸とは?
「阿吽」は仏教や神道で古くから使われる言葉です。
これはサンスクリット語の最初の音「A(阿)」と最後の音「Un(吽)」から来ており、
「始まりから終わりまで」=宇宙のすべてを意味します。
つまり、「阿吽の呼吸」とは、
2体がすべてのものを守り、生命の循環を象徴しているということなのです。
| 名称 | 位置 | 特徴 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 阿形(あぎょう) | 右側 | 口を開けている | 宇宙の始まり・生命の誕生 |
| 吽形(うんぎょう) | 左側 | 口を閉じている | 宇宙の終わり・生命の安寧 |
実は「獅子」と「狛犬」は違う?
昔の神社では、狛犬は「獅子」と「狛犬」の2種類で構成されていました。
- 右(阿形)=「獅子」:口を開け、角がない
- 左(吽形)=「狛犬」:口を閉じ、角がある
この2体はそれぞれ、陽(太陽・動)と陰(月・静)を象徴しています。
やがて時代が進むにつれて、両方をまとめて「狛犬」と呼ぶようになりました。
狛犬が神社を守る理由
狛犬は、神社に災厄や穢れが入るのを防ぐ守護神の化身です。
古代インドでは「ライオンが悪を退ける」とされ、
それが中国を経て「神を守る獅子像」として広まりました。
日本に伝わると、神道の「神域を守る存在」として定着し、
「獅子=力の象徴」「狛犬=神聖な守護者」として対で置かれるようになったのです。
狛犬の姿にも意味がある
狛犬は神社によって姿が異なりますが、
その表情やポーズには次のような意味が込められています。
- 玉を踏んでいる狛犬:世界や宇宙の調和を表す
- 子犬を抱えている狛犬:子孫繁栄・家族の守護
- 獅子舞のような形:厄を払い、福を呼ぶ
また、奈良時代や平安時代には、狛犬は神社の屋内に置かれていましたが、
鎌倉時代以降になると、現在のように屋外で参道を守る形が主流となりました。
狛犬が「左右にいる」ことで意味が完成する
1体だけでは、狛犬の意味は半分しかありません。
「阿」と「吽」の2体がそろうことで、
始まりと終わり・呼吸・宇宙の調和・陰と陽がすべて表現されるのです。
それはまさに、神社という“神聖な空間”の入口にふさわしい象徴。
左右に立つことで、神域を守りながら、訪れる人を静かに迎えているのです。
狛犬の左右配置まとめ
| 位置 | 名称 | 特徴 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 右 | 阿形 | 口を開ける | 始まり・誕生・陽の気 |
| 左 | 吽形 | 口を閉じる | 終わり・静寂・陰の気 |
おまけ:神社によって個性豊かな狛犬たち
狛犬は地域や神社ごとに個性があり、
「笑っているような顔」や「犬らしい優しい表情」など、ユニークな造形も見られます。
沖縄の「シーサー」も、実は狛犬と同じ起源。
同じく「阿吽」で対になり、魔除けとして家や街を守っています。
まとめ:狛犬は“神域の門番”
神社の狛犬が左右にいるのは、阿吽の呼吸で神社を守るためです。
右の阿形は“始まり”を、左の吽形は“終わり”を司り、
2体そろって「命の循環」と「宇宙の調和」を象徴しています。
次に神社を訪れるときは、狛犬の表情や足元にも注目してみてください。
そこには、千年以上受け継がれてきた日本人の信仰と祈りの形が隠されています。

コメント